― あいなめの葛叩きと、蛤の土鍋ご飯 ―
季節が春から初夏へと移ろうこの時期、
西麻布いちのでは、涼やかさと滋味をあわせ持つ二品をご用意しております。
ひとつは「あいなめの葛叩き」。
もうひとつは「蛤の土鍋ご飯」です。
■ あいなめの葛叩き
あいなめはこの時期に旬を迎え、
身質がしっかりとして、ほどよい旨みを蓄えます。
まず丁寧に三枚におろし、細やかに骨切りを施します。
その後、薄く塩をあててしばらく置くことで、余分な水分を抜き、
旨みを凝縮させていきます。
下処理を終えた身に吉野葛をまとわせ、
出汁にくぐらせると、葛がやわらかく透き通り、
白身がほのかに浮かび上がる涼やかな一椀に仕上がります。
合わせるのは、しめじと純粋菜。
純粋菜のつるりとした口当たりは、初夏らしい軽やかさを感じさせ、
梅肉のやさしい酸味が全体を引き締めます。
見た目にも、味わいにも、季節を映す一品です。
■ 蛤の土鍋ご飯
もう一品は、旬の蛤を使った土鍋ご飯。
まずは丁寧な砂抜きから。
塩水と塩振りを繰り返し、時間をかけて雑味を取り除きます。
その後、酒と昆布を合わせたやさしい出汁で火入れを行い、
殻が開いたところで身を取り出します。
身はひとつひとつ丁寧に外し、口元まできれいに整えます。
さらに、煮汁は濾して旨みとして活かし、
薄口醤油とみりんで軽く味を含ませます。
しぐれ煮のように強く煮るのではなく、
あくまでふくよかな旨みをまとわせる程度に。
ご飯は出汁で炊き上げ、
蒸らしの最後の段階で蛤を戻します。
こうすることで、身はふっくらとやわらかく、
旨みと甘みがご飯全体にやさしく広がります。
仕上げには木の芽、そして山椒の香りを添えて。
初夏らしい清々しさを感じていただけます。
■ 季節を味わうということ
どちらの料理も、
素材の持つ力を引き出すために、
ひとつひとつの工程を丁寧に重ねています。
涼やかさを映す一椀と、
滋味深い土鍋ご飯。
この時期ならではの味わいを、
ゆっくりとお楽しみいただければ幸いです。